「Touch31」は、Javaによってプログラムが作成されたタイピング練習ソフト。練習は、Internet Explorerなどのブラウザ画面上でHTMLファイル（touchtype.html）を呼び出して行う。3種類の練習コースが用意されており、キー入力における基本的な指の動きから、実践的な文章の入力までを学ぶことができる。

プログラムを起動すると、画面上にはどの練習をするのかのコースメニューが表示される。練習コースは大きく分けて「基礎コース」「増田式コース」「例文コース」の3種類が用意されている。「基礎コース」は、正しい指使いの習得を目的にしたもので、キーボード上の指定されたキーを、指定された指で入力していく。つまり、入力される文字は問わず、正しいキー入力を「指に覚えこませる」ためのコースだ。コースは「基礎運指トレーニング」「弱点克服メニュー」などのサブメニューから構成される。

「増田式コース」は、20年の歴史を持つといわれる練習方法を採用したもので、画面上に表示される文字を順にキーボードで入力していく。表示される文字は運指の練習を目的とした文字列で、文章や単語としての意味はなさない。増田式コースには、ローマ字と英文の2コースがあり、特定の指ごとに段階を追って鍛えていくことができる。特にローマ字コースでは、25項目もの練習が行える。

「例文コース」は、意味を持つ文章を入力することで、基礎コース、増田式コースでの練習成果を試すという、練習の最終段階にあたる実践的なコース。日本語と英語に分かれたこのコースも、「日本国憲法」「アメリカ大統領ステートメント」など、豊富な練習メニューが用意されている。

ゲームタッチの練習ソフトの場合、キーの練習もできるのだが、ついゲームをクリアすることに夢中になって、単にキーを高速に入力できればそれでよい、ということになりかねないという欠点がある。ゲーム風味の追加は、たしかにソフトを最後までやり遂げるという動機付けの役に立つし、そのゲームがおもしろければおもしろいほど、やる気もかきたてられるものだ。しかし、それがあまりにも強すぎるばかり、目的（キー入力を覚える）と手段（ゲームをクリアする）とが逆転しがちになってしまう。

「Touch31」の場合、こうしたゲーム風味は一切存在しないため、練習を行おうという動機付けの点では、比較的に弱いかもしれない。その反面、非常にまじめに作られているため、練習の効果は高いし、また高速に入力しなければならないという強迫感がほとんどないため、ゆっくりと落ち着いて練習できる。結果としてかなり高い練習効果が得られるように思える。

問題は「練習をしたいと思わせる動機付け」であろうが、どうしてもまじめに練習をする気が起きないという人には、例えばゲームタイプの練習ソフトをやる前にこのソフトで運指のトレーニングをしてみてはどうだろう。正しい運指を手が覚えてしまえば、どうしてもクリアできなかったゲームが楽にクリアできるようになるかもしれない。

究極の狙いは？
Webベースのシステムにしようというもうひとつの狙いは、ネットワーク上で成績履歴やランキング表示の機能を実現しようと思ったからです。本ソフトは残念ながらJavaのセキュリティの関係で手元のパソコンのファイルにはアクセスできませんが、Webサーバ上のCGIプログラムと連携させると本格的なシステムになります（実際、勤務校で200名以上のトレーニングをサポートしています）。インターネット上では、ささやかながら成績管理ができるものを実働させています（http://homepage2.nifty.com/bemu/touch31/）。

開発中に苦労した点
本来目的とした指の基本運動トレーニング部分は大したことはなかったのですが、当初おまけ程度にと思っていた例文トレーニングの部分でもこだわってしまい、かなりの時間を取られました。例えば、ローマ字の綴りのゆらぎを許容する処理や、疑似的にアルファベット→読み→漢字に変換する処理の部分です。Javaの細かい仕様の違いにも泣かされ、文字の色分けをあきらめざるを得ませんでした。

ユーザにお勧めする使い方
タッチタイプの練習は、やみくもにやるよりも、それぞれの練習の目的を意識し、自分の状態を冷静に振り返る必要があります。本プログラムでは成績を記録する機能はありませんが、毎週練習日誌をつけて、その週の目標と到達度のチェックを行うと効果的だと思います。また、他の練習ソフトよりも、解説文の量が多いので、じっくり読んでいただければと思います。