ソフトを開発しようと思った動機、背景
外見だけ見ると、見栄えを強調する美少女ゲームと大差ないように思われがちですが、実は近年稀に見る硬派なゲームです。このゲームは「アドベンチャーゲーム」と呼ばれるジャンルを復興し、その楽しみを多くの人に理解してほしいという願いによって作られました。文章を読み、物語を進めてゆくタイプのゲームは、最近では大半が「ノベル」という形式で占められています。ユーザはただ物語を読むだけ、ゲーム中に登場する選択肢は、ただ準備された世界のうち、どれを読むかを決めているに過ぎず、結局「正しい選択」と「間違った選択」を見極めるだけのものになってしまっています。特に個人制作のフリーソフトの場合、物語の規模も小さく、結末が少ししかないため、選択肢の数はさらに少なくなり、エンディングまでに片手の数くらいしか選択しない(あるいは選んでも何も変わらない、ゲームオーバーになって足止めする程度)ものになりがちです。
本来の「アドベンチャーゲーム」は、準備された道を選ぶものではなく、目的を達成するための道を自分の力で切り開くものです。しかし、その道を模索する作業が「コマンドの総当たり」とか「同じ行動の反復」といった無味乾燥な作業である作品が多いため、「アドベンチャーゲームなんて面倒臭い」という印象ができてしまったのでしょう。
この作品では、状況に流されて生きてきた主人公が、初めて自分の力で運命を勝ち取ろうとして成長を遂げる物語を描いています。自分の力で道を切り開き、困難に正面から立ち向かう主人公の成長は、そのままプレイヤーに反映されているのです。
受動的な、ただ読むだけのゲームからの脱却。自力で困難と戦って、目的を達成することの喜びを味わうこと。そのためにこのゲームは「ノベル・アドベンチャー」という形式──つまり、ノベル型の表現方法を組み入れた、紛れもなく正統派のアドベンチャーゲームであることを選択しました。
開発中に苦労した点
このゲームは、ブラウザ上でプレイする形式となっています。JPEG画像の高圧縮率、データ量という点でFlashによる動画が大変有利であること等が主な理由ですが、やはりブラウザや機種による違いは大いに苦しめられました。推奨環境はWindows+IE 5.5以降ですが、Netscapeでもプレイできるように調整しなければならなかったので、相当開発時間が延びてしまいました。しかしやはり、IE版の方がエフェクトが多彩で、しかもシステムが安定しているので(Netscapeはブラウザ本来のバグでよく落ちます)、できるだけIEでプレイすることをお勧めします。なお、Mac版はホームページの方で公開しています。
ユーザにお勧めする使い方
前述の通り、このゲームは至って硬派なアドベンチャーゲームです。恋愛ゲーム的な外面で装ってはいますが、それはとっつきやすく感情移入しやすくするための方法論であって、いとも簡単に感動する物語が読めるといったものではありません。むしろ、困難を乗り越えたという実感がともなってこそ、このゲームの真のエンディングは最大の感動をもたらします。そのときこそ、自分の力で運命を変えたという実感が、物語の感動を何倍にも大きくしてくれるはずです。
私のホームページにはヒントも掲載されていますが、できるだけ自力で謎を解き明かすようにしてみてください。感激もひとしおのはずです。
今後のバージョンアップ予定
フリーソフト版「時の故郷」は、基本的にこれで完結ですが、オリジナルCD-ROM版「時の故郷」を私のホームページで販売しています。エンディング後の後日談、本編と同等のボリュームがある追加シナリオ、デジタル録音のBGM、おまけゲーム等を満載した内容になっています。特に、本編をプレイした人にこそプレイしてほしい、追加シナリオは必見です。もう一人のヒロインが物語を発展させ、新たな視点から主人公の成長劇を完成に導く内容です。本編をご覧になったあとは、ぜひ挑戦してみてください。
(MAKIO)