●ソフトの種別について
Vectorでは、「フリーソフト」「シェアウェア」を含め、
登録ソフトウェアの種別を大きく次の9種類に分類しています。以下に、各ソフトウェアの一般的な制限についてご説明します。
ここでの説明は「一般にこういうものが多い」という目安であり、絶対的なものではありません。
個々のソフトの取り扱いに関しては、必ずドキュメントで確認してください。※このページは『PACK for WIN 1997年前期版』『PACK for MAC 1997年前期版』
掲載記事を元に、一部加筆・訂正したものです。
《1.フリーソフト》
フリーソフトの多くは、使用に制限はありません。しかし、著作権はあくまでも作者に帰属します。作者から許可を得ていなければ、改変したり販売したりすることはできません(現実には販売の定義が難しいところですが、人に渡すときに必要とされるフロッピー代金程度の実費であれば、再配布にあたって受け取ってもよいとする意見が一般的です)。配布に関しても制限を設けていないものが大半ですが、特定の再配布方法を禁止したり、再配布にあたっては作者への連絡を義務付けている場合もあります。
原則として、作者が作者自身や作者の身内のために作ったソフトを好意で公開してくれているものなので、動作の保証はありません。仮にソフトの不具合やバグがあったとしても、作者には修正する義務はありません。しかし、バグなどの内容を作者に電子メールなどで知らせれば、修正してくれる場合も少なくありません。
利用者からのメールは、フリーソフト作者にとって何よりも励みとなります。使っているときは「使ってます」「ありがとう」という簡単なメールであっても送りたいものです。また作者の好意で使わせてもらっているわけですから、バグ報告にもお礼の言葉や使用した感想などを書き添えたいものです。
《2.シェアウェア》
シェアウェアとは、一定の試用期間を設け、試用期間後も継続して使いたい場合は代金の支払いを要求するソフトです。試用期間中は特定の機能に制限があったり、あるいは起動するたびにシェアウェアであることを表示したりします。送金すると、パスワードやID番号などが作者から送られてきます。これを入力すると、機能制限は外れ、支払いをうながすメッセージも出なくなります。
たまにシェアウェアであっても、機能制限がなく、また試用期間も無制限というものもあります。こうしたソフトの場合は、つぎに説明する「フリーソフト(寄付歓迎)」に分類すべきかもしれませんが、送金金額を指定している場合や、「シェアウェア」という記述がドキュメントにある場合は「シェアウェア」に分類しています。
シェアウェアは、フリーソフトよりも商品に近いものですが、試用期間や金額面などで、一般の商品よりもユーザーの便宜が図られている面があります。シェアウェアという安価なソフトウェアの供給ルートを確保するためにも、継続して使うときは、必ず代金を送金してください。なお、ソフトを作成して配布している人や学生など、特定の条件の人に対する優遇制度を取り入れている場合もあります。これは個々のソフトのドキュメントで確認してください。
代金の送り方は、普通はヘルプ画面やドキュメントファイルに書かれています。送金方法には郵便局の現金書留や銀行振り込みのほか、NIFTY-Serveなどが行っている送金代行サービスを利用できるものもあります。送金代行サービスは、パソコン通信のメニューの中で手続きをするだけで送金が済み、代金はNIFTY-Serveの利用料金に加算されるので、ほかの方法に比べて手間がかかりません。米国のシェアウェアの場合は、クレジットカードで支払いができるものもあります。
《3.フリーソフト(寄付歓迎)》
フリーソフト(寄付歓迎)は、「義務ではないが、寄付は歓迎する」というソフトウェアです。添付ドキュメントに特に寄付に関する記述があったものを、この分類に入れています。
感覚的にはフリーソフトとシェアウェアの中間ですが、限りなくフリーソフトに近いものから、シェアウェアだけれど金額を指定していないだけのものまで、その幅はかなり広いといえます。
なお、この区分を設けたのは、「フリーソフト」の作者が「寄付を拒んでいる」という意味では決してありません。ほとんどのフリーソフト作者にとって、予期せぬプレゼントを受け取るのは大変うれしいものです。
《4.メールウェア》
メールウェアは、フリーソフトと同様に自由に使用することのできるソフトですが、フリーソフトと違うのは、継続して利用するためには、作者にメールを送る必要があるという点です。フリーソフトでは、メールを送ることは「マナーとして」という感覚ですが、メールウェアではメールを送ることが「使用条件」となります。
メールウェアは、シェアウェアと同様に試用期間が定められている場合も少なくありません。試用の結果、継続して使用すると決めた場合は、作者にメールを送ってください。
電子メールで「使用した感想」「要望や希望」「動作環境」などを送ることを求めるものが多いようです。どのようなメールを求めているかは、個々のソフトに添付されているドキュメントなどを参照してください。添付ドキュメントにメールのひな型があればそれを使用すればよいでしょう。ない場合には「使用した感想」「要望や希望」「動作環境」などを書き添えて送ればよいでしょう。これは作者にとって「どういったユーザーがいるかを把握しておきたい」「応援の声を聞きたい」という欲求を満たしてくれるすばらしい贈り物となります。
《5.PDS (Public Domain Software) 》
PDSはPublic Domain Softwareの略で、公共に属するソフトというような意味になります。ソフトの作者がそのソフトの著作権を放棄したものです。「誰でも勝手にどんな使い方をしてもよい」と理解すればいいでしょう。勝手に改変してもかまわないし、どんなプログラムに組み込んで使ってもよいということになります。
PDSは、主にアメリカで発達しました。ネットワークそのものが学校などの公共性の高い機関を軸に発達した経緯が、PDSの発達にも影響しています。
しかし、日本では厳密な意味では「日本製のPDS」は存在しません。これは日本とアメリカの著作権法が異なっているためです。アメリカの法律では、著作権は主張しないと確定されません。その一方で、著作権を放棄することは自由です。しかし日本の法律では、著作権は創作物を作成した瞬間に自動的に確定され、その著作権を放棄することはできません。
注意していただきたいのは、本当はフリーソフトなのに、PDSと呼ばれている場合もあるということです。日本では1988年ごろまでフリーソフトという言葉が存在せず、フリーソフトのことをアメリカ式にPDSと呼ぶ人も少なくありませんでした。しかしPDSは作者に著作権がない(つまり、作者の権利を無視してよい)という意味で、フリーソフトとはまったく異なるものです。
ただ、作者が「あえてPDSと同じ扱いをしてほしい」という意味で、PDSと称している場合もあります。いずれにしても、本当にPDSなのか、あるいはPDSとして扱ってほしいという意味なのか、あるいは本当はフリーソフトなのにPDSと称しているのかは、付属するドキュメントで確認してください。
《6.GPL (General Public Lisence) 》
GPLはGeneral Public Lisenceの略で、米国に本拠地を持つFree Software Foundationという団体が中心になって提唱したソフトの配布条件です。
GPLはPDSと同様に無料で使用でき、コピーして人にあげることができます。改変をして再配布することもできます。ただし作者は著作権を放棄していません。
GPLのもっとも特徴的な規定は「再配布を妨げてはならない」ということです。GPLのソフトは、改変して使うこともできる一方で、改変した人も、改変したバージョンの再配布を断ることができないのです。これには、「ソフトは、ソフトを使う人すべての共通の財産であるべきだ」という思想的な主張が込められています。
GPLのソフトは、こうした規定を記述したテキストファイルを添付して配布されています。
《7.サンプル版》
サンプル版は、市販ソフトのサンプルです。「評価版」「試用版」「お試し版」と称されることもあります。試用期間を制限し、一部の機能を削除したバージョンである場合がほとんどですが、市販品並みに使用できるものもあります。
《8.製品差分》
製品差分は、市販ソフト製品のバグ修正、バージョンアップなどのためのファイルです。元になる製品をお持ちの場合にのみ使えるものです。
《9.その他》
その他は、上記以外のものです。メーカーが自社ソフトの無料バージョンアップのために配布したファイル、製品に関する資料、規格などのドキュメント、ランタイムライブラリなどが含まれるほか、フリーソフトやシェアウェアの独自の条件のものがいくつかあります。
例えば、「私にお金を送る必要はないけど、被災地や恵まれない人たちに寄付してください」という条件もあれば、「再配布を積極的にすること」が使用の条件の場合もあります。こうした条件の在り方は、作者のソフトに対する考え方の違いであったり、あるいは作者が意図的に行っている運動であったりします。
いずれの場合も、作者の意図を汲み取り、それを尊重した上で、ソフトを使用するようにしてください。